6月度特別イベント 『中国における企業文化育成の秘訣を学ぶ、工場見学会』

6月度特別イベント 『中国における企業文化育成の秘訣を学ぶ、工場見学会』 2011/06/28

日時:2011年6月25日(土)14:00-18:00(懇親会18:30-20:30) テーマ:中国における企業文化育成の秘訣を学ぶ、工場見学会 見学工場:東莞パイオラックス(東莞百楽仕汽車精密配件有限公司) 懇親会:新東陽ホテル 参加者:40名 主催:深セン和僑会 主幹事:梅山、副幹事:岡、議事録:梅山

今回は通常の定期イベントではなく特別イベント扱いとして、東莞市塘XIA鎮にある東莞パイオラックス社(東莞百楽仕汽車精密配件有限公司)様の工場見学会を行いました。

この工場見学会は東莞パイオラックス社の総経理である富田氏が深セン和僑会の会員である事から、事務局より「深セン和僑会の方々にぜひ御社の工場見学をさせて頂く機会を提供して欲しい」とお願いし、実現した工場見学会でした。

また今回の工場見学は一般的に行われる「生産現場を学ぶ」といった目的の工場見学だけではなく、以下の2点を主目的として開催させて頂きました。

1.製造業としての工場運営ノウハウだけでなく、企業づくり、人づくりのための企業文化育成の仕組みを学ぶ 2.参加された方が学ぶだけでなく、会社運営の実践の場に活かして頂く

上記2点の目的を達成するために、以下の工夫が施されました。

企業文化育成に関する「仕組み」を多く学んで頂くために、「企業文化紹介ビデオ」、「朝礼大会ビデオ」といった工場見学だけでは見る事が出来ない部分の活動をご紹介頂き、また質疑応答の時間を多めに取って頂きました。

また参加者の条件として、日本人だけでの参加ではなく、会社運営における重要ポストにある中国人幹部社員も一緒に参加して頂くようお願いをしました。

日本人の管理者だけが学んだ場合、それを自社に持ちかえって実践するためには、まず中国人幹部社員に説明して理解してもらう必要があります。しかし人は聞いただけでは表面上の意味は理解しても、本質を理解するのは難しいため、実際に活かされるまで数多くの障壁があります。

そこで中国人幹部社員と一緒に見学、ディスカッションして頂く事ですぐに実践に移せる、という富田社長の自らのご経験からこの様な条件を設けさせて頂きました。

以下、工場見学会の当日の様子を流れにそって、ご紹介します。

  • 現地集合

今回は東莞地区の工場地帯での開催とあって、参加者の移動方法が大変でした。深センから列車で移動する方、広州から列車で移動する方、また車で独自に移動される方、様々な移動方法で現地に集合して頂きましたが、1名の遅刻者も無く今回参加された方の意識の高さが伺えました。

門に到着するなり、非常に好感を持った出来事が有りました。

門番の方々が笑顔で迎えてくれるのです。通常中国の工場では門番は受付の役割もあるにはありますが、それ以上に部外者や不審者を敷地内に入れないための治安上の問題で設置されているのが主な目的です。ゆえに中国の多くの工場では門番が笑顔で迎えるよりも、無愛想な態度で「悪い人は中に入れないぞ」といった治安上の職務意識の方が強いのが通常かと思います。

しかし東莞パイオラックス社では、治安上の目的もありますが、それに加えて門番の方を「お客様に対して会社のイメージを伝えるトップバッター」との位置づけをされています。ゆえに門番の来客者に対する態度を重要視しておられます。

また非常に興味深いのが、門番の方々は自社の社員では無く、外部の会社から派遣されている派遣社員という事です。自社の社員であれば、上記の様な対応をしてもらうための教育や企業文化を伝える事はやりやすいかと思いますが、外部の社員の場合、その教育は派遣元の会社が行います。その外部の社員が笑顔の対応が出来るのは素晴らしい事だと思います。

ちなみに、東莞パイオラックス社での門番経験者はその他の会社に派遣された際には、その能力が認められ班長などに昇格するとの事で、現在ではその派遣会社から東莞パイオラックス社に門番の教育をお願いしますと、お願いされている状況との事です。

  • 会社概要説明、企業文化紹介ビデオ、朝礼大会ビデオ

今回は日本人、中国人の混在した参加者のため日本語が分からない方もいる事から最初の挨拶の後、日本語組みと中国語組みの二つに分かれ会社概要の説明、それから2つのビデオ(企業文化紹介、朝礼大会紹介)を鑑賞しました。

本来であればビデオではなく朝礼大会を含め実際の活動(仕組み)を現場で見たかったのですが、今回の工場見学会ではそれら全てを実現する事は難しくビデオでの鑑賞となりました。しかしビデオの内容が素晴らしく、また富田総経理からの説明が加わった事で東莞パイオラックス社の企業文化や、それがどの様な仕組みによって達成されているのか十分に理解する事ができました。

この企業文化紹介ビデオ、朝礼大会ビデオは社員の実家(家族)に送られており、実家のご両親が自分たちの息子、娘の働く職場を理解するのに役立っており、ご両親から感謝の手紙も届いているとの事です。これらのビデオ以外にも定期的に「パイオラックスの家」という社内報を発行され、それらも社員の実家に送られているとの事です。

また現在社員規模が500名に達していますが、全社員を対象に毎月誕生日会を開き、総経理も同席され社員一人一人にあったプレゼントを贈られているとの事です。通常多くの社員を抱えた場合、買い物カードや電話カードなど形式的で画一的なモノを贈られるかと思いますが、東莞パイオラックス社では社員が多くなってもその社員にあったプレゼントを贈られているという事です。同じ50元のコストでも社員の感動が違う、という結果を招いてます。

他にも様々な仕組みがあるのですが、それらは全て統一の価値観から作られています。それは「社員の成長、社員の将来を考える」という事です。それがベースとなって様々な仕組みが構成されているのです。

  • 工場見学

日本語人グループは富田総経理自ら案内して頂き、中国人グループはパイオラックス社の幹部社員により案内して頂きましたが、工場運営における最新ノウハウが満載の工場でした。詳しい説明はここでは書けませんがキーワードで書かせて頂きます。

・バーコードを利用した管理システム (ペーパーレス、工程チェック、在庫品のフリーロケーション、課税品・非課税品の同一場所管理、トレーサビリティ、通い箱管理、人の管理) ・成型品にバリが発生しない金型管理術 ・見える化を超えた視える化 ・ライン再構成を前提としたライン設計 ・仕掛り品極小のためのワゴン管理 ・省エネのための工場設計、空調設計 ・生産状況確認のための2種類のカドウ率 などなど

  • 質疑応答

質疑応答には予定を超える時間を取って頂き、参加者の方々から日本語・中国語が飛び交う中、様々な質問に対して富田総経理、幹部社員である易氏、孫氏、HAO氏にお答え頂きました。

工場の運営ノウハウに関する事、データ管理に関する事、管理システムを導入する場合の考え方・手順に関する事、企業文化育成に関する事、最近の課題である90後(90年代生まれの社員)への教育方法に関する事、東莞パイオラックス社の過去から現在に至るまでの発展過程に関する事、と多くの質問が飛び交い予定時間をオーバーするほど沢山の質問にお答え頂きました。

  • 懇親会

東莞パイオラックス社近くのレストランに場所を移し、参加者24名、東莞パイオラックス社4名で懇親会を行いました。もっと詳しく聞きたかった事、質疑応答では聞きづらかった事など、1対1で沢山の会話がされた事かと思います。

実は、東莞パイオラックス社の幹部社員はほとんどの方が日本語を話せます。しかしかといって日本語が出来ないと出世できないわけではなく、能力があれば幹部社員になっていける社内制度との事です。日本語を勉強するのは社員が自主的に必要性を感じて積極的に勉強している状態です。これも「人からやらされているのではなく、自分からやる」という仕組みが出来ている事の表れかと思います。

今回参加頂いた皆さまが自社に戻られ、一緒に工場見学をされた中国人幹部社員の方とともに、今後の良い会社作りに少しでも役立って頂ければ、今回工場見学会を引き受けて下さった東莞パイオラックス様、そして我々深セン和僑会事務局一同、大変嬉しく思います。

この場をお借りして、多大なるご協力を頂きました東莞パイオラックス様に再度お礼を申し上げたいと思います。 本当にありがとうございました。