第44回 定期イベント 講演 『原田則夫経営哲学にみる21世紀型企業経営』 2011/04/24
日時:2011年4月23日(土)18:30-22:00 講演テーマ:原田則夫経営哲学にみる21世紀型企業経営 講演者:クオリティマインド代表 林徹彦氏 会場:羅湖区 新時代酒店21階セミナールーム 懇親会:羅湖区 黄鶴楼 参加者:24名(講演会) 主催:深セン和僑会 主幹事、議事録:梅山
今回は深セン和僑会とは古くから繋がりがあり、華南地区で工場の品質・経営改善アドバイスをされている クオリティマインドの林徹彦氏に講演して頂きました。
実は林氏、深セン和僑会第8回の定期イベントの際にも講演して頂き、今回は2回目の講演となりました。 講演の冒頭、林氏から
「中国では“8”は発財(財を成す)の発の字に発音「fa」に似ている事からとても縁起のいい数字とされています。今回は第44回です。一見悪い数字に見えますが、実はこれはもっと良い数字です。なぜならば音階の4番目ド、レ、ミ、ファのファです。44はファファだからもっと良いのです。この第44回の講演を受けられとても光栄です」
と軽くジョークを飛ばして頂き始まった講演会でした。
今回の講演は林氏の本業である品質改善のお話ではなく、企業経営の考え方という視点で 20世紀型経営ではなく、21世紀型経営をするための方法(原田式経営哲学)をお話頂きました。
原田式経営哲学の名称に出てくる原田氏ですが、かつて深セン市でソニーのサプライヤーとして存在していた倒産寸前の会社 「SOLID」を再建し、中国500強の輸出入企業にまで育て上げられた経営者として有名な方です。
詳しくはちょうど3年前の今日(2008年4月24日)深セン和僑会で開催したSOLID工場見学会のレポートをご覧ください。 http://www.szwakyokai.net/M_New_Info_Id02.asp?41.jsp (日本語原文) http://www.szwakyokai.net/M_New_Info_Id02.asp?43.jsp (中国語翻訳版。東莞パイオラックス様提供)
林氏は初めて原田式経営哲学(その当時はこの呼び方はありません)の存在を知った時、最初はまゆつばものではないかと思われたそうです。しかし詳しく調べ、実際に工場を訪問されたところ、非常に感銘を受け、そして学び、現在はその教えを引き継ぐ者としての使命感を持ちその普及に力を注がれるようになりました。
「20世紀型企業と21世紀型企業」
・20世紀型企業・・・利益と存続を目的とする企業。企業が業績を上げてこそ従業員を幸福にでき、社会に貢献する事が出来るという考え方。労働搾取型であり、企業は資本家が利益を得るための道具としてみなされる。従業員は労働の対価として賃金を得ると考える。
・21世紀型企業・・・企業は仕事を通して従業員を成長させ従業員を幸福にする事を目的とする。従業員が幸福になれば企業の業績が発展し、その結果社会に貢献が出来ると考える。夢と希望に満ちた従業員が社会を明るくする。企業は従業員を幸せにする道具である。従業員は労働の対価として自己成長を得る。
「人心管理と人心マネジメント」
中国での企業運営は中国人社員との関係がよく問題になる。その際の考え方として人心管理ではなく、人心マネジメントを取り入れる事。人心管理は社員のばらついている心を押さえつけ一定の範囲に入れようとするが、人心マネジメントは人の心を理解し、活用することであり、許容してそして成果を管理する手法である。
「中国人は生卵、日本人はゆで卵」
中国人というのは、赤の他人に対しては非常に冷酷な一面を持っているが、心の境界線を越えると、日本人以上のやさしさや思いやりを発揮する人達である。
例えば四川大地震の際にはなぜか全くの赤の他人が、また生活が苦しい人達が募金するのが多く見られた。それは自分の中にある思いやりを発揮する心の境界線が四川大地震の被災者にまで広がった事によると思われる。
境界線を越えるための最初の壁は厚いが、いったん超えると非常に面倒見の良い人達である。それはまるで生卵のごとく殻は固いが中身は柔らかいのである。日本人はゆで卵のごとく柔らかさが一定である。
そんな中国人を人心マネジメントする際には「愛社精神」を共通目的としても通じない。21世紀型企業に必要なのは「成長意欲」を共通目的として彼らの求心力を高めることである。
「21世紀型企業の事例」
1.東京ディズニーランド 「夢と魔法の国」「お客様に感動を与える」 2.一茶一座 「お客様を親友のように、同僚を家族のように」 業績評価は売上ではなくお客様の感動 3.海底[手労]火鍋 「感動サービス:変態服務、肉麻服務」 海底[手労]の発展を支える根本はお金ではなく社員である 4.SOLID 社員に対して、彼らが退社した後の幸せを願って育成する 20歳の女の子にかける期待の大きさ 短期で辞めると分かっていても行うホンキの新人教育。親が子供を育てるかのごとく
「原田式人材育成のポイント」
・教えるのではなく育てる ・教える前に学ぶ理由を理解させる ・愛社精神ではなく自己成長意欲を求心力とする ・語り継ぐより受け継ぐ教育 ・愛情と信頼 ・OJTの重要性 ・実践を理論化し教育する ・自信と独創性の養成 ・相手の目線で教える ・専門技術しかない人材を否定(例:ただの通訳ではだめだ。+1が大事) ・人材採用(素直である事、向上心がある事、他人に迷惑をかけない事。この3つだけがあれば良い)
「日系企業の問題はなぜ起こるか」
また現在多くの日系企業で起こっている問題が、原田式経営哲学ではどうして発生しないかに関して考察して頂きました。
1.日系企業でストライキが起こっているが、これは社員に向け情報が公開されていない為、また幹部と従業員の間に十分なコミュニケーションがとられていない事により発生している。原田式経営では全ての情報を公開している。会社の売上、利益、総経理を含めた全社員の給料など全てを公開する。また原田氏は毎日工場内を巡回し問題点の発見・改善に努めている。
2.就職先として日系企業の人気が無いのは、会社内で発展するための空間が小さい事、また技術職であれば技術的成長しろが狭い事が原因である。原田式経営では社長だけが日本人で全ての幹部職位は中国人に任せ、権限委譲している。
最後に原田式経営哲学に感銘を受け、企業経営において実践している方々のご紹介です。
1.百楽仕東莞(パイオラックス東莞) 富田社長 原田氏と最後に出会った日本人。富田氏の考えとして三流企業は生産を強化する、二流企業は営業を強化する、一流企業は文化を強化するというポリシーのもと、様々な仕組みを社内に作られています。
2.蛍日貿易 西塚氏 自社の深セン事務所の経営を原田式経営の手法を用いてマニュアル化、現在はローカルスタッフだけでの運営を可能にした。
3.鄭泰集団 鄭総経理 MBAを学び会社経営をしていたが上手くいかなかった。原田氏の経営哲学を学ぶためにSOLIDの社員寮に1週間寝泊まりし新人教育を学んだ。原田氏から頂いた言葉「全ては人から始まる」という教えを守り、現在会社の改革中。
また原田氏とは直接関係ないが、まさに21世紀型企業経営といえる企業経営をされている方の書籍をご紹介頂きました。林氏によると松村氏の考えは非常に参考になるとの事です。 書名「さらば、さもしい経営者」松丸公則著
原田式経営哲学に初めて触れる方は、その手法に驚かれ「信じられない」という言葉を発せられます。しかし実際に工場を訪問するとそれが本当なのだと理解出来ます。
原田氏は2009年12月に逝去されましたが、その経営哲学はまだ生き続け多くの会社で引き継がれています。深セン和僑会では今後も原田式経営哲学を学ぶ機会を設け、多くの21世紀企業を生み出すためのきっかけ作りをしていければ良いなと思います。
林先生、素晴らしい講演ありがとうございました
なお原田式経営哲学についてもっと詳しく知りたい方は、林氏がまとめられたサイトがありますのでそちらをご参考下さい。 http://quality-mind.seesaa.net
*当日、参加された方からメッセージを頂きましたので、ご本人の許可を得た上で掲載させて頂きます*
こんにちは。 4月23日の講演会に参加させて頂いたA.T.です。 先日は林徹彦様より貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。 私はシンセン市郊外の沙井という町で、プラスチック成形工場の総務を担当しております。 職務上、人材の流動管理や教育改善といった内容は、尽きることの無い問題であり、日々頭を悩ませております。 そんなおり、和僑会事務局様より今回の講演会案内を頂戴し、 「21世紀型企業は、 ・従業員を管理(コントロール)しません。」 という告知内容に目がとまり、どんな内容か視聴してみたいと思い参加することに致しました。 私の会社は典型的な20世紀型企業で、企業の利益を何事においても最優先に考え、企業利益なくしては労働者の利益は存在しないと考えています。そしてこの考えは日頃から労働者にもよく伝えています。 それゆえに林様の告知内容を拝見した際は、衝撃的で半信半疑な気持ちでいっぱいでした。
お話を伺い、原田様が行ったこと、林様が推進されている事柄は、魅力に溢れ、理想的な仕組みだと感じました。しかし一方では一種の賭博にも近く、リスクは大きいものだとも感じました。 閉鎖的且つ小規模な工場で働く私にとって、教えて下さった内容を今すぐ実行に移す事はまだまだ壁が高いと感じましたが、同時に私たち企業側も労働者に向けて明確な変化を示すことが絶対必要なのだと、そう教えられた気がしました。 まずは小さな会社でも起こせる変化、を考え出し、去年には無かった事を何か一つ実現できれば良いなと考えます。 また今後仕事をする上で、諸々の判断や検討を迫られた時、林様のお話をヒントにして答えを導きびたいと思います。 改めて、貴重なお話と刺激を与えて下さったことにお礼申し上げます。 ありがとうございました。 A.T.
*頂いた寄付金に関しまして*
3月に行われました深セン和僑会5周年記念イベントにおいて東北関東大震災に関するディスカションを行いました。(http://www.szwakyokai.net/M_New_Info_Id02.asp?40.jsp)
現在、深セン和僑会として継続して震災支援が出来るよう微力ながら活動を進めています。またこの活動を通してより多くの方々との心の繋がりを築いていけたらと考えています。
現在、行っている活動としまして香港和僑会、上海和僑会と協力してシリコンバンドの作製を行っています。このシリコンバンドは5月8日に東京代々木公園にて開催されるチャリティーコンサート(http://311prayforjapan.net)に提供され会場で販売、売上金全額が被災地の方々へ温かい食べ物を届けるために使われます。
また上記チャリティコンサート以外にも、各地区の和僑会メンバーが開催するチャリティーイベントなどの震災支援活動に提供していく予定です。
今月の講演会におきまして参加者の方々から寄付金を頂き、合計3800元集まりました。この寄付金はシリコンバンドの作製に当てられ上記の活動に提供して行く予定です。この場をお借りしまして改めてお礼をさせて頂きます。ありがとうございました。
チャリティイベントの様子に関しましては報告の有ったものを随時このサイト上で掲載して行く予定です。