第8回深セン和僑会議事録  クオリティーマインド 林 徹彦 先生

第8回深セン和僑会議事録  クオリティーマインド 林 徹彦 先生 2007/04/21

開催日時: 平成19年4月21日(土) 19:20~20:40
議題: すべての会社が収益を上げる秘密は工場の経営管理にある。
講師: 林 徹彦 先生
開催場所: 羅湖爵士大厦
記載者: 深セン和僑会事務局  田中 修一
出席者数:

年々中国生産品のシェアが広がるに連れ、その品質要求が格段と高まっている。その中で顧客を満足させるためには正しい企業活動の有り方を持ってそれを実現することが必須である。

企業活動とは・・・

1. 企業が物やサービスを顧客に提供することに対し、その対価を受け取る過程で顧客満足を実現し、更には顧客歓喜を生み出すこと。

2. 常に品質改善を行うことで経営革新を実現し、利益増加を生み出すこと。

顧客満足とISO9001の要求事項について顧客満足とは顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受け止め方。一方、ISO9001の要求事項では顧客の要求事項を定義してこれを満たすことを顧客満足と定義している。

一般的な企業では顧客満足センターがクレーム対応部署として機能するが、このような一部の部署でのクレーム対応業務のみでは、顧客満足センターというよりも、むしろ顧客不満足センターに陥りやすい。これは、前述した「顧客満足」や「ISO9001の要求事項」の定義だけでクレーム対応業務を行おうとする企業が多いためである。

一部の部署に所属する従業員だけでなく、全従業員が顧客を満足させたいという精神を共有する企業文化を各現場に浸透させることができれば、顧客満足を超越した顧客歓喜を生み出すことができる。

顧客歓喜とは・・・言葉にされない願望に対し期待をはるかに超える驚きを伴った反応。顧客歓喜を生み出すことによって顧客を企業の信者にする。(信+者=儲)

例1:食後のケーキサービスはメニューに書いていなければ大変喜ばれるが、メニューに書いてあると当たり前のように思われてしまう。裏メニューがお客にとって思わぬ感動を生み出すことがある。

例2:某ホテルでは決められたマニュアルどおりに動くよりも、顧客の視点からフレキシブルに規則を変えて顧客を満足させるという企業文化が根付いている。(プールのオープン時間の話)

例3:中国の電化製品メーカー、ハイアールはサービスセンターの係が電話に出て30分後にはサービスマンを派遣できる体制を整えている。

例4:砂漠で故障したロールス・ロイスを修理するためサービススタッフをヘリコプターで派遣。その後同社が顧客に行った対応は思いがけない顧客歓喜を生み出すものだった。これも企業文化を象徴するという逸話など。

顧客歓喜を全社員が生み出す企業文化の構築顧客歓喜を常に生み出す企業文化を構築するには品質改善と経営革新が欠かせない。品質改善、つまり品質保証の5段階を経て理想的な経営革新が成される。その最終ステージに到達して理想的な企業文化が構築される。

品質保証の5段階とは・・・

不良品を作らないために・・・(その1)不良品を始めから作らないようにするには、まず生産管理の基本、4M管理を理解することが必須。これらを全て満たすことで品質が安定する。4M管理(生産管理の基本)

①人[Man] ②設備・機器[Machine] ③材料[Material] ④方法[Method]

※4Mの変動は品質、生産性に影響を与える。※4Mの安定はリーダーの責任※人はそれ以外の3Mを管理するので最も重要※教育・訓練・作業指導書・日常点検・識別管理

不良品を作らないために・・・(その2)5S(品質保証の基本)を科学的根拠に基づいて5Sを徹底すれば、製品性・品質を改善することができる。※5Sの考えは中国語でも翻訳され、中国企業でも採用されてきている。

5S(品質保証の基本)整理:必要な物と不要な物の区別を明確にし、不要な物を捨てる。整頓:必要なものを定位置に定量置き、表示を明確にする。清掃:職場内をきれいに清掃し、汚れの発生を防ぐこと。清潔:上の3Sを徹底し、維持できるようにすること。躾:人がきちんと決まりを守るようよい習慣を身につけさせること。

※これらを徹底することで、道徳の向上、無駄を低減、問題を表面化、不良を表面化、効率の向上、安全性の向上、運転率の向上、納期管理、顧客信用に繋がる。※客が来るから掃除するのではない。常にその状態を保つことに意味があり、あくまで科学的根拠に基づいて徹底しなければならない。

不良品を作らないために・・・(その3)問題解決の基本として5ゲン主義を徹底する。

5ゲン主義①現場で、②現物を見て、問題点を③具体化し、④原理・原則に基づき、⑤現実的な解決方法を制定すること。※5ゲン主義の実践が問題解決の基本である。※偶然の成功は必ず問題点が再発する。

顧客満足を支える三要素

①品質保証(QA):QMS ISO9001 ②品質改善(QI):QI品質改善③クオリティマインド(QM):品質第一の心※これらを包括的に支え、顧客満足、しいては顧客歓喜を生み出す根底には独特の企業文化がある。

企業文化の定義企業を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体であり、経営者の思い(企業の目的目標)を支えるもの。

企業文化とは・・・企業文化とは人である。人がありて企業が存在するならば、その個々がどんな企業文化の下で仕事をするかでその企業の将来が決定する。

従業員達は・・・

①働く喜びと誇りを感じているか?②組織の不断の成長を意識しているか?③知識を共有しているか?④助け合い学びあう心を持っているか?⑤共に成長する喜びを感じているか?※設備は導入したその日から減価償却が始まり価値が減る。※人は雇ったその日から適切な指導により成長し価値が増える。例1:NASAで掃除夫として働くスタッフに職務を尋ねると、「宇宙にロケットを飛ばすことだ。」と自信を持って回答する。

正しい企業文化を構築するために・・・まずは理念、目的・目標、情報など知識の共有が重要。トップが共有の姿勢をきちんと示すことから始まる。知識を能力に交換する現場教育を徹底し、知識の進化と共有が連続して好循環を生み出すプロセスで企業文化は育つ。

知識の進化と共有のプロセス(知識を能力に変換)

経営者の想いを形に落とす実際に仕組みを作り、計画し、実行する。ただし、基盤となる企業文化がどんなものかによって、それが機能するかしないかが決まることが多々ある。

仕組み: 人事制度・給与制度・教育制度
仕掛け: キャリアコミュニケーションシート
職種・職能別ジョブディスクリプション
個人別スキルマップ・教育計画
目標管理・実績シート

企業文化をコアコンピタンスに!①制度、政策は他の会社も真似ができる。②企業文化は他では真似ができない。※企業文化が再生産・進化する仕組みと仕掛けを以って企業競争力源泉とする。※ディズニーランドの従業員の行動はマクドナルドでは使えない。

まとめ5ゲン主義に基づいた強い現場力を徹底すると同時に、経営者が適切と考える企業文化を企業全体へ浸透させる努力が最も重要な課題と言える。その企業文化を社員らが誇りに思い、一人一人が顧客満足に対する意識を高め、しいては顧客歓喜を生み出す好循環を作り出すことができれば収益は自ずと増加する。