第46回 定期イベント 講演 『時代と国境を越える普遍の新規開拓法を探る』

第46回 定期イベント 講演 『時代と国境を越える普遍の新規開拓法を探る』 2011/06/12

日時:2011年6月11日(土)18:30-22:00 講演テーマ:時代と国境を越える普遍の新規開拓法を探る 講演者:株式会社セルプス 代表取締役 岡村晴雄氏 会場:羅湖区 新時代酒店21階セミナールーム 懇親会:羅湖区 沪江軒上海菜館 参加者:26名 主催:深セン和僑会 主幹事:熨斗、議事録:梅山

今回は新規開拓専門のコンサルタントである株式会社セルプス代表取締役、岡村晴雄氏に講演をして頂きました。

岡村氏は日本で新規開拓を長年のテーマとして事業に取り組まれ、またコンサルタントとしても多くのクライアントの新規開拓に関する問題に取り組まれてきました。

今回は岡村氏にとっても未開の地ともいえる中国において、ご自身の新規開拓のノウハウが通じるのかどうか、参加者の皆さんに試して頂きたいチャレンジ的な要素もありました。

冒頭、岡村氏の新規開拓理論の紹介から始まった講演会、以下、その概要を記します。

  • 新規開拓の流れ

1.集客モデルの創造(最も力を注ぐべきところ) 2.商売の基本は信用(コツコツと行うべきところ) 3.販売促進は技術不要の告知程度(一般的に新規開拓手法と呼ばれているところ。しかし本質では無い)

岡村氏は上記の順番に力を注ぐべきと述べられています。

  • 集客モデルの創造トライアングル

誰に、何を、どのように

このシンプルだが、非常に重要な要素を数多く組み合わせ、比較検証する事で一番良い集客モデルを組み立てる。

誰に・・・理想の顧客像を思い描く 何を・・・商品を一つに絞る。伝えたい事、といった切り口でも良い どのように・・・一見すると単純であるが中身は複雑

例として、メリーチョコレートの集客モデルを以下に記します

誰に・・・恋する乙女 何を・・・告白のタイミング どの様に・・・バレンタインデー

ここでのポイントは、メリーチョコレートはチョコレートを販売してはいるが、集客モデル上ではチョコレートの販売をしていない事である。彼らは恋する乙女に告白のタイミングという価値を提供しているのである。そこにバレンタインデーという方法を導入して、結果としてチョコレートを買ってくれる市場を形成したのである。

また、既存の集客モデルが成熟し、成長しなくなった状態にある事業が集客モデルを変換した事によって大きく発展した例を上げる。 ヤマハの例であるが、元々は

誰に・・・富裕層 何を・・・ピアノ どの様に・・・

であったが、販売が行き詰っていた。そこで以下の様に集客モデルを変えた。

誰に・・・子女 何を・・・弾く楽しみ どの様に・・・ピアノ教室

ここでも「何を」に対しピアノを販売するのではなく、ピアノを弾く楽しみを提供する事に切り替え、またそのためにピアノ教室を導入した 。これによりピアノ愛好家が増え、結果として新たなピアノの販売市場に繋がっていった。

また、最新の事例として、ABCクッキングの事例をあげて頂きました。

誰に・・・料理が出来ない女の子 何を・・・料理をする楽しみ どの様に・・・料理教室

「どの様に」のところにxxx教室と入れる事で、既存の集客モデルを発展できる可能性がある。

※ここで注意 集客モデルの形は非常にシンプルあるが、そこにいたるまでは多くの組合せを仮説、検証を繰り返す事によって見出すものである。時々起業家が、思いつきで「素晴らしい集客モデルを思いついた」と話す事があるが、大抵は似たようなモデルがすでに存在するか、無いとしても一起業家レべルでは作り上げられる様な集客モデルには成り難い。

  • 商売の基本は信用

信用には二つの種類がある

1.築く信用(既存客との関係維持に必要) 2.見せる信用(新規開拓に必要)

一般的な日本の経営者は築く信用は重要視するが、見せる信用をおろそかにする傾向がある。

築く信用とは、当たり前の事を当たり前に行う事で作り上がるもので、その結果、顧客との間に物語が出来るのである。また、当たり前の事を当たり前にやるという事は、今ある現在の状況(制約条件も含めて)のもと、やるべき事をすべてやり、やれる事をすべてやる事で、顧客の期待の少し上を目指す事である。

見せる信用とは、

例えば、組織、本店所在地、企業理念、資本金、売上高、従業員数、主な取引先、お客様の声といったものである。またこれらのものを使う際には、自社の集客モデルをしっかり認識する必要がある。

例えば、零細企業を対象としている集客モデルにおいて主な取引先として大企業を並べてしまうと、零細企業にとっては近寄りがたい存在となってしまう。また本店所在地に関しても東京などの大都市にあれば信用があると思いがちだが、顧客によっては地域密着型で顧客の傍に本店があった方が顧客からの信頼を得られる場合もある。

見せる信用を上げるために行える事として以下の様なものがある。

量を増やす:例えばHPにおいて用語集、業界の情報、社長のブログなど多くの情報を載せる。目安として1日で読めないくらいの量を載せるのが良い。ある会社では内容は大した事が無いニュースレターだが非常に厚い雑誌の様なニュースレターを出す事で、読ませる事に成功している。

質を上げる:例えばHPの情報を同じ業界内でトップの内容にする事だが、中小企業には難しい事である。 中小企業が取れる良い方法は、会社名を見て内容がすぐわかる様な名前にする、HPサイト名を見て内容がすぐわかる様な名前にする、社長の顔を全面に押し出す、といった方法が有効である。

続ける:例えばHPの更新やメルマガの発行を続ける事である。シンプルではあるが、この方法は新規顧客化のための信用は得られやすい。

その他の例としては、技術の信頼性を上げるために大学名を使うといった方法もある。東京大学はハードルが高いが、その他の国公立大学は企業からの支援金を欲しているので、共同研究などのオファーには比較的容易に応えてもらえる。

  • 販促に関して

販促は技術不要の告知程度で良い。この意味は決して販促は意味が無いという事ではなく、先に述べた事が非常に重要であるという意味である。その後で販促を行えば、レバレッジが効き大きな成長を得る事が出来る。

講演の後、参加者が実際に抱えている問題に関する質問に答えて頂いたり、また逆に、岡村氏からの質問で中国において行われている新規開拓の際に注意している事などに関してディスカッションを行いました。

今回のお話は起業家にとっても、また会社で営業活動に携わる方にとっても気づきや学びを得られたものになったかと思います。ここをスタート地点として、今回参加された皆さまがご自身の新規開拓分野を発展させるために行動を続けられる事を願っております。

岡村先生、一昨年の1月に続き、今回もありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い致します!